優しいカツアゲ
僕の職場は横浜近辺の歓楽街とデートスポットとドヤ街が隣り合う
何とも乱雑な街にある。
ドヤ街寄りのファミマにて喫煙をして寿命を消費していた所、
浅黒い肌をしてタトゥーをTシャツの裾から覗かせた
40歳ぐらいのおっちゃん弱に声を掛けられた。
「初対面の人にこんなお願いをするのは大変失礼だと思いますが、
財布を落としてしまって電車の帰り賃も持っていない。
警察も駅もお金を貸してくれず、どうにもならない。
きっと返すから帰り賃を貸して頂けないでしょうか。」
聞くと埼玉の大宮だという。大体1000円ちょいという所か。
貸した所で返して貰える可能性など皆無と言えよう。
しかし、元来の断り下手と人の好さで売ってきている僕である。
どうしたものか。
「じゃあ、駅まで一緒に行くので切符を買いましょう。」
「いやいや、それは申し訳ないから結構です。すいませんでした。」
意外に早く引き下がるのだな。
カツアゲ額も知れてるから、負けたら負けたで良かったのに。
会社の利益と自分に火の粉が降りかからない事だけを考えて働く身としては
嘘でも人が喜ぶ姿が見たかった。
本当に。